若き人びとは所々に群れゐつつ おのがどち あはれなることども うち語らひて
殿の思しのたまはするやうに 若君を見たてまつりてこそは 慰むべかめれと思ふも いとはかなきほどの御形見にこそ
とて おのおの あからさまにまかでて參らむ と言ふもあれば かたみに別れ惜しむほど おのがじし あはれなることども多かり
院へ參りたまへれば いといたう面痩せにけり 精進にて日を經(ふ)るけにや と 心苦しげに思し召して
御前にて物など參らせたまひて とやかくやと思し扱ひきこえさせたまへるさま あはれにかたじけなし
中宮の御方(おほむかた)に參りたまへれば 人びと めづらしがり見たてまつる
命婦の君して 思ひ盡きせぬことどもを ほど經るにつけてもいかに と 御消息聞こえたまへり
常なき世は おほかたにも思うたまへ知りにしを 目に近く見はべりつるに いとはしきこと多く思うたまへ亂れしも たびたびの御消息に慰めはべりてなむ 今日までも
とて さらぬ折だにある御けしき取り添へて いと心苦しげなり 無紋の表の御衣に 鈍色(にびいろ)の御下襲(おほむしたがさね) 纓(えい)巻きたまへるやつれ姿 はなやかなる御装ひ(オホムヨソひ)よりも なまめかしさ まさりたまへり
春宮(とうぐう)にも久しう參らぬおぼつかなさなど 聞こえたまひて 夜更けてぞ まかでたまふ
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若い女房たちは所々に群れ塊り 銘々 あはれなることなど うち語らふ
左大臣が仰せのやうに 若君をば お世話申し上げてをれば 多少は慰みもあるでせうけれど 餘り幼けなくて頼りない御形見ではございませんか
とて おのおの ちょっと里に下がって參りませう と言ひ出すのも居り 互ひに別れを惜しむなどして さういふ折は それぞれみな 色々と感慨を催すことが多いものだ
君が參上すると 院は 君のお顏がたいそう窶れてしまひ これも〔珍しく〕精進の日々を送る所爲であらうかと かはいさうに思はれ
御前にて御食事などお摂らせになり あれこれと御心配なさるのが 有難くも忝い
藤壺中宮の御方に參ると 女房たちが頻りに珍しがって歡待する
宮は命婦の君をして
こたびは思ひも盡きせぬことにて ほど經るにつけては如何
と お悔やみを下される 君は
この世に安心なきことは 頭の中では分かってをりながら やはりこの目で見ますと 厭はしいことが多く 思ひ亂れてをりましたが たびたびの御便りを戴き 今日までも 何とか
とて 御息所への思ひが加はり 實においたはしい御樣子
無紋の喪服に 鈍色の御下襲 纓を巻きたまへる〔喪中は纓を内側に巻き上げておく慣し〕やつれ姿は なまじ華やかな装ひよりも 雅やかに見える
春宮にも久しくお目にかからず 心配で堪らぬ由など申し上げ 夜更けになって退出された

