昔の御物語どもなど 出で來て 今はた かかる御仲らひに いづ方につけても 聞こえかよひたまふべき御睦びなど 心よく聞こえたまひて
御酒oho-miki あまたたび参りて もののおもしろさも とどこほりなく 御醉ひ泣きohom-wehi-nakiども えとどめたまはず
御贈り物に すぐれたる和琴wagon一つ 好みたまふ高麗笛koma-buye添へて 紫檀sitanの箱 一具hito-yorohiに 唐karaの本honども ここの草sauの本など入れて 御車mi-kurumaに追ひてたてまつれたまふ
御馬oho-mumaども 迎へ取りて 右馬寮migi-no-tukasaども 高麗の樂gakuして ののしる 六衞府の官人の禄ども 大將賜ふ
御心mi-kokoroと削soぎたまひて いかめしきことどもは このたび停todoめたまへれど
内裏 春宮 一院iti-no-win 后kisaiの宮 次々の御ゆかり いつくしきほど いひ知らず 見えにたることなれば なほ かかる折には めでたくなむ おぼえける
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〔源と太政大臣は〕昔の御物語どもなど 出で來て 今はた 〔夕霧と雲居雁が結ばれるなど〕 かかる〔良好な〕御仲らひに いづ方につけても 聞こえかよひ(交誼を結び)たまふべき御睦びなど 心よく聞こえたまひて
御酒 あまたたび参り(召し上り)て もののおもしろさ(座興)も とどこほりなく 御醉ひ泣きども えとどめたまはず
〔源氏の太政大臣への〕御贈り物に すぐれたる和琴一つ 〔源の〕好みたまふ高麗笛添へて 紫檀の箱一具(一揃)に 唐の本(書)ども ここの草の本(草書)など入れて 御車に追ひてたてまつれ(奉らせ)たまふ
〔先に列べた 帝から拜領の〕御馬ども 迎へ取りて 右馬寮ども 高麗の樂して ののしる 六衛府の官人の禄ども 大將(夕霧)〔が〕賜ふ
〔源の〕御心と(ご意向であるからと)〔何事も〕削ぎ(簡略にし)たまひて いかめしきことどもは このたび停めたまへれど
内裏 春宮 一院(朱雀院) 后の宮(秋好) 次々の御ゆかり いつくしきほど いひ知らず 見えにたることなれば なほ かかる折には めでたくなむ おぼえける
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源氏の大殿と太政大臣も 昔話など懷かしくなさって 今はもう それぞれの御子息と御息女が結ばれたことでもあり 今後はいづれにせよ心通はし 親しくすべきことを約束なさって
御酒を盃を重ね 座興も面白いほどに進み ご両人とも御醉ひ泣きを抑へることもお出來にならない
太政大臣の御參列は豫想もしなかったことゆゑ その御禮の御贈り物には 取り急ぎ 和琴の名器一つに 大殿がお氣に入りだった高麗笛を添へ 紫檀の箱一揃へに 和漢の書のお手本等など入れ 御車を追って差し上げられた
帝から拜領の御馬どもを受領し 右馬寮の者が高麗の樂を奏で 大音響が響く 六衛府の官人への禄は夕霧の新大將が差配なさった
かうして 大殿の御意向もあり 何事も簡略にと 今囘は大層なことはお控へになったのだが
上は内裏から 春宮 朱雀院 秋好中宮と 次々に御ゆかりの方々の御榮へにより かうは愛でたいことになってしまふのであった
