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<title>平成源氏の物語</title>
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<description>そのかみの こゝろたづねて みだれたる すぢときわくる 玉のをぐしぞ</description>
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<title>第十三卷 明石 十五(年ごろ公私御暇なくて）</title>
<description>   第十三卷 明石 十五(年ごろ公私御暇なくて） 年ごろ 公私（おほやけわたくし） 御暇（おほむいとま）なくて さしも聞き置きたまはぬ世の古事どもくづし出でて かかる所をも人をも 見ざらましかば さうざうしくや とまで 興ありと思すことも交る かうは馴れきこゆれど いと氣高う 心恥づかしき御ありさまに さこそ言ひしか つつましうなりて わが思ふことは 心のままにもえうち出できこえぬを 心もとなう 口惜し と 母君と言ひ合はせて嘆く 正身（さうじみ）は おしなべての人だに め...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-12T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;"><span style="color:#000032;">　　　第十三卷　明石　十五(年ごろ公私御暇なくて）<br /><br />　年ごろ　公私（おほやけわたくし）　御暇（おほむいとま）なくて　さしも聞き置きたまはぬ世の古事どもくづし出でて<br /><br />　かかる所をも人をも　見ざらましかば　さうざうしくや　とまで　興ありと思すことも交る<br /><br />　かうは馴れきこゆれど　いと氣高う　心恥づかしき御ありさまに　さこそ言ひしか　つつましうなりて　わが思ふことは　心のままにもえうち出できこえぬを　心もとなう　口惜し　と　母君と言ひ合はせて嘆く<br /><br />　正身（さうじみ）は　おしなべての人だに　めやすきは見えぬ世界に　世には　かかる人もおはしけり　と見たてまつりしにつけて　身のほど知られて　いと遥かにぞ　思ひきこえける<br /><br />　親たちの　かく思ひあつかふを聞くにも　似げなきことかな　と思ふに　ただなるよりは　ものあはれなり<br /><br />　四月（しぐゎち）になりぬ　更衣（ころもがへ）の御装束（おほむしゃうぞく）　御帳（みちゃう）の帷子（かたびら）など　よしあるさまにし出でつつ　よろづに仕うまつりいとなむを<br /><br />　いとほしう　すずろなり　と思せど　人ざまの　あくまで思ひ上がりたるさまの　あてなるに　思しゆるして見たまふ<br /><br />　京よりも　うちしきりたる御とぶらひども　たゆみなく多かり<br /><br />　のどやかなる夕月夜（ゆふづくよ）に　海の上曇りなく見えわたれるも　住み馴れたまひし古里（ふるさと）の池水　思ひまがへられたまふに<br /><br />　言はむかたなく戀しきこと　いづかたとなく　ゆくへなき心地したまひて　ただ目の前に見やらるるは　淡路島なりけり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　年ごろ　公私　御暇なくて　さしも（さほど）〔子細に〕聞き置きたまはぬ世の古事ども　くづし（ぼつぼつと）〔語り〕出でて<br /><br />　かかる所をも　人をも　見ざらましかば　さうざうしくや（もの寂しかったのではないか）　とまで　興ありと思すことも〔ときには〕交る<br /><br />〔入道は〕かうは〔君に〕馴れきこゆれど　〔君の〕いと氣高う　心恥づかしき（目映い）御ありさまに<br /><br />　さこそ言ひしか（さんざん威勢のよいことを云ってゐたのに）　つつましうなりて（氣が退けて來て）　わが思ふことは　心のままにも　えうち出できこえぬを　心もとなう　口惜し　と　母君（入道の妻、明石の尼君）と言ひ合はせて嘆く<br /><br />　正身（姫本人）は　おしなべての人だに（竝の男にさへ）　めやすきは見えぬ世界に（さうさうのが見當たらないのに）　世には　かかる人もおはしけり　と見たてまつりしにつけて　〔我が〕身のほど知られて　いと遥かに〔手の届かぬ御人だと〕ぞ　思ひきこえける<br /><br />　親たちの　〔姫を源氏にと〕かく思ひあつかふを聞くにも　似げなき（とんでもない）ことかな　と思ふに　〔なまじ〕ただなるよりは（何もなかったのより）　ものあはれなり<br /><br />　四月になりぬ　〔入道は〕衣更への御装束　御帳の帷子（垂れ衣）など　よしあるさまにし出でつつ（調じ誂へつつ）　よろづに仕うまつりいとなむを<br /><br />〔君は〕いとほしう（氣の毒で）　すずろなり（無用のことなのに）　と思せど　〔入道の〕人ざまの　あくまで思ひ上がり（氣位高くし）たるさまの　あてなるに　思しゆるして見たまふ<br /><br />　京（紫）よりも　うちしきりたる御とぶらひども　たゆみなく多かり<br /><br />　のどやかなる夕月夜に　海の上　曇りなく見えわたれるも　住み馴れたまひし故郷の池水　思ひまがへ（見紛ひ）られたまふに<br /><br />　言はむかたなく戀しきこと　いづかたとなく　ゆくへなき心地したまひて　ただ目の前に見やらるるは　淡路島なりけり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　もう何年も公私に渡り暇がなく　さしも聞き漏らした世の出來事どもを　入道　片端から語り出して<br /><br />　君も　こんな所で　かういふ人物に出合はなかったら　さも惜しいことだったとまで　面白く思はれることもあった<br /><br />　かうして入道は君に御近づき申し上げるが　やはり君の氣高く　目映いやうな御ありさまに氣壓され<br /><br />　あれほど威勢のよかったのが　氣も退けてしまひ　思ふことも儘には申し上げられない　まことに歯痒くて殘念だと　母君と二人で愚癡ってゐる<br /><br />　當の姫本人は　竝の男でさへ　ちゃんとしたのがゐないのに　生きてをれば　かういふ人もいらしったのだはと　思ふにつけても　我が身のほどが知られ　遥か遠い所におはす御方だと　諦める他もない<br /><br />　親の意向を聞いても　とんでもないことだと思ひ　なまじひ知った爲に　いっそうみじめな氣分になる<br /><br />　四月になった　入道は相變はらず　衣更への御装束やら　御帳の垂れ幕など　上品に調じ誂へつつ　何かと甲斐甲斐しくお世話なさるが<br /><br />　君は氣の毒でもあり　無用のこととも思ふが　その人となり　あくまで氣高き志を捨てぬ姿を　敢へて憎む氣にもなれない<br /><br />　京（紫）よりも　始終の御見舞ひ　滞りもない<br /><br />　のどかな夕月夜　海の上が曇りなく見渡せる　住み馴れた故郷の家の池水とも見紛ふやうである<br /><br />　何とも言はれずに戀しくなり　ぼぉっと氣の遠くなるやうな氣持になられる　目の前に見えるのは　ただ淡路島だけであった</span></span><br /><br /><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF00FD&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=458276648X" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><br /><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 十四(明石の入道行なひ勤めたるさま）</title>
<description>   第十三卷 明石 十四(明石の入道行なひ勤めたるさま） 明石の入道 行なひ勤めたるさま いみじう思ひ澄ましたるを ただこの娘一人を もてわづらひたるけしき いとかたはらいたきまで 時々漏らし愁へきこゆ 御心地にも をかしと聞きおきたまひし人なれば かくおぼえなくて めぐりおはしたるも さるべき契りあるにや と思しながら なほ かう身を沈めたるほどは 行なひより他のことは思はじ 〓の人も ただなるよりは 言ひしに違ふと思さむも 心恥づかしう思さるれば けしきだちたまふことな...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-11T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;"><span style="color:#000032;">　　　第十三卷　明石　十四(明石の入道行なひ勤めたるさま）<br /><br />　明石の入道　行なひ勤めたるさま　いみじう思ひ澄ましたるを<br /><br />　ただこの娘一人を　もてわづらひたるけしき　いとかたはらいたきまで　時々漏らし愁へきこゆ<br /><br />　御心地にも　をかしと聞きおきたまひし人なれば　かくおぼえなくて　めぐりおはしたるも　さるべき契りあるにや　と思しながら<br /><br />　なほ　かう身を沈めたるほどは　行なひより他のことは思はじ<br /><br />　〓の人も　ただなるよりは　言ひしに違ふと思さむも　心恥づかしう思さるれば　けしきだちたまふことなし<br /><br />　ことに觸れて　心ばせ　ありさま　なべてならずもありけるかな　と　ゆかしう思されぬにしもあらず<br /><br />　ここには　かしこまりて　みづからも　をさをさ參らず　もの隔たりたる下の屋（しものや）にさぶらふ<br /><br />　さるは　明け暮れ見たてまつらまほしう　飽かず思ひきこえて　思ふ心を叶へむ　と　佛（ほとけ）神（かみ）をいよいよ念じたてまつる<br /><br />　年は六十（ろくじふ）ばかりになりたれど　いときよげに　あらまほしう　行なひさらぼひて　人のほどの　あてはかなればにやあらむ<br /><br />　うちひがみ　ほれぼれしきことはあれど　いにしへのことをも知りて　ものきたなからず　よしづきたることも交れれば<br /><br />　昔物語などせさせて聞きたまふに　すこしつれづれの紛れなり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　明石の入道　〔佛道に〕行なひ勤めたるさま　いみじう思ひ（悟り）澄ましたるを　ただこの娘一人〔の將來ばかり〕を　もてわづらひたるけしき<br /><br />　いと　かたはらいたき（傍目にも氣の毒なほど）まで　時々〔君に愚癡を〕漏らし愁へきこゆ<br /><br />〔君の〕御心地にも　〔娘は〕をかしと聞きおきたまひし人なれば　かく　おぼえなくて（思ひがけず）　めぐりおはしたるも　さるべき契りあるにや　と思しながら<br /><br />　なほ　かう身を沈めたるほどは　行なひ（精進）より他のことは思はじ<br /><br />　〓の人（紫）も　ただなるよりは（かういふ時はなほ）　言ひし（君が約束したこと）に違ふと思さむも　心恥づかしう（氣が退けるやうに）思さるれば　〔娘に〕けしきだち（その氣を見せ）たまふことなし<br /><br />〔しかし〕ことに觸れて　〔娘の〕心ばせ　ありさま　なべてならずも（竝々ならずも）ありけるかな　と　ゆかしう思されぬにしもあらず<br /><br />　ここ（君の御座所）には　〔入道は〕かしこまりて　みづからも　をさをさ參らず　もの隔たりたる下の屋にさぶらふ<br /><br />　さるは（さうではあるが）　明け暮れ〔君を〕見たてまつらまほしう　飽かず思ひきこえて　思ふ心を叶へむ　と　佛神を　いよいよ念じたてまつる<br /><br />　年は六十ばかりになりたれど　いときよげに（こざっぱりとし）　あらまほしう（理想的に）　行なひさらぼひて（修行痩せして）<br /><br />　人のほど（人柄）の　あてはかなればにやあらむ（上品ぽいからであらうか）　うちひがみ（強情で）ほれぼれしき（阿呆らしい）ことはあれど<br /><br />　いにしへのこと（故實）をも知りて　ものきたなからず（清々としてをり）　よしづきたる（教養深い）ことも交れれば<br /><br />　昔物語などせさせて聞きたまふに　〔君も〕すこしつれづれの紛れなり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　明石の入道　佛道に勵む有り樣　いみじう悟り澄まして　ただこの娘一人ばかりが　もて惱み草のやうだ　君にも愚癡を零すことがあり　傍目にもいぢらしい　<br /><br />　君の方も　娘の芳しいのは聞いていらしたので　かうして思ひもかけず廻り逢へたのも　何かの縁だらうとは思しながら<br /><br />　それでもやはり　かうして運氣のない間は　身を愼んだ方がよいと思はれ<br /><br />　〓の紫も　かういふ時はなほ　話が違ふはと拗ねるだらうし　それもいとほしいから　娘にその氣がありさうな素振りはなさらない<br /><br />　しかし　ことに觸れ　娘の心ばせ　ありさま　なかなかのものであると　引かれる氣がないでもない<br /><br />　入道は　君の御座所には畏まって　自分では滅多に來ない　もの隔たった下屋の方に控へてゐる<br /><br />　ただ　さうはしながら　明け暮れ君とお逢ひしたく　飽かず憧れて　念願を叶へようと　ますます佛神に念じ奉った<br /><br />　年は六十ばかりになってゐるが　なかなかこざっぱりとし　ほどよい具合に修行痩せし<br /><br />　人柄も上品ぽく見え　少々強情で馬鹿っぽいところはあるが　故實もよく知り　清々としてをり　教養深いところも匂はせるので<br /><br />　昔物語などさせてみると　多少は退屈も凌げるのであった</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF00E5&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4003001516" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><br /><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 十三(入道の宮ばかりにはめづらかにてよみがへるさまなど）</title>
<description>   第十三卷 明石 十三(入道の宮ばかりにはめづらかにてよみがへるさまなど） 入道の宮ばかりには めづらかにてよみがへるさまなど 聞こえたまふ 二條院のあはれなりしほどの御返りは 書きもやりたまはず うち置きうち置き おしのごひつつ 聞こえたまふ御けしき なほことなり 返す返す いみじき目の限りを盡くし果てつるありさまなれば 今はと世を思ひ離るる心のみまさりはべれど 鏡を見ても とのたまひし面影の離るる世なきを かくおぼつかなながらや と ここら悲しきさまざまの愁（うれ）は...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-10T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;"><span style="color:#320000;">　　　第十三卷　明石　十三(入道の宮ばかりにはめづらかにてよみがへるさまなど）<br /><br />　入道の宮ばかりには　めづらかにてよみがへるさまなど　聞こえたまふ<br /><br />　二條院のあはれなりしほどの御返りは　書きもやりたまはず　うち置きうち置き　おしのごひつつ　聞こえたまふ御けしき　なほことなり<br /><br />　返す返す　いみじき目の限りを盡くし果てつるありさまなれば　今はと世を思ひ離るる心のみまさりはべれど<br /><br />　鏡を見ても<br /><br />　とのたまひし面影の離るる世なきを　かくおぼつかなながらや　と　ここら悲しきさまざまの愁（うれ）はしさは　さしおかれて<br /><br />　遥かにも　思ひやるかな　知らざりし　浦よりをちに　浦傳ひして<br /><br />　夢のうちなる心地のみして　覺め果てぬほど　いかにひがこと多からむ<br /><br />　と　げに　そこはかとなく書き亂りたまへるしもぞ　いと見まほしき側目（そばめ）なるを　いとこよなき御心ざしのほど　と　人びと見たてまつる<br /><br />　おのおの　故郷（ふるさと）に心細げなる言傳てすべかめり<br /><br />　を止みなかりし空のけしき　名殘なく澄みわたりて　漁（あさり）する海人ども誇らしげなり<br /><br />　須磨はいと心細く　海人の岩屋もまれなりしを　人しげき厭（いと）ひはしたまひしかど　ここはまた　さまことにあはれなること多くて　よろづに思し慰まる <br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　入道の宮（藤壺）ばかりには　めづらかにてよみがへるさま（思ひもよらず命拾ひした有り樣）など聞こえたまふ<br /><br />　二條院の〔紫の〕あはれなりし（返事が届いた）ほどの〔君の〕御返りは　書きもやりたまはず　〔書いては〕うち置き〔書いては〕うち置き　〔涙を〕おしのごひつつ　〔御返事〕聞こえたまふ御けしき　なほことなり<br /><br />　返す返す（何度も何度も）　いみじき目の限りを盡くし果てつるありさまなれば　今はと　世（俗世）を思ひ離るる心のみまさりはべれど<br /><br />　鏡を見ても　〔分れても　影だにとまる　ものならば　鏡を見ても　なぐさめてまし〕<br /><br />　とのたまひし（姫の）面影の離るる世（事）なきを　かく〔逢へないままに〕おぼつかなながらや（氣掛かりなまま）〔別れることになるのか〕と　ここら（これほど多くの）悲しきさまざまの愁はしさは　さしおかれて　<br /><br />　遥かにも　思ひやるかな　知らざりし　浦よりをちに　浦傳ひして<br /><br />〔遙かに　貴女を思ふ　知らない浦から　さらに遠い浦に移って〕<br /><br />　夢のうちなる心地のみして　〔今も〕覺め果てぬほど〔であるから〕　いかにひがこと〔出鱈目〕　多からむ<br /><br />　と　げに　そこはかとなく書き亂りたまへるしもぞ　いと　見まほしき側目（脇から覗いてみたくなるほど）なるを　いとこよなき〔姫に對する〕御心ざしのほど　と　人びと見たてまつる<br /><br />　おのおの　故郷に　心細げなる言傳て（便り）すべかめり<br /><br />　を止み（雨の小休止）なかりし空のけしき　名殘なく澄みわたりて　漁する海人ども誇らしげ（大喜び）なり<br /><br />　須磨はいと心細く　海人の岩屋もまれなりしを　人しげき厭ひはしたまひしかど（人氣の多いのには閉口されながら）　ここはまた　さまことにあはれなること多くて　よろづに思し慰まる<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　藤壺の入道の宮ばかりには　思ひもよらぬ態にて命拾ひした樣子など　御便り申し上げる<br /><br />　二條院の姫君からの　あはれの文への御返事は　君もすらすら書き遣ることがかなはず　一筆して思案　二筆して投げ首と　涙を押し拭ひつつ　お書きになる　その御樣子は　やはり尋常ではない<br /><br />　これでもか　これでもかと　ひどい目を味はひ盡くしたやうな按配にて　もう俗世なんぞ捨てようとの氣持が湧いて來ましたが<br /><br />　鏡を見ても　〔分れても　影だにとまる　ものならば　鏡を見ても　なぐさめてまし〕<br /><br />　と仰った姫の面影が燒きついて離れない　かうして逢へない寂しさのまま　別れることになるのか　と思ふと<br /><br />　もう他のごたごたした苦勞や心配などどうでもよく　遙か遠くから　貴女へ思ひが飛ぶのだ　知らない浦から　もっと遠い浦へ傳ひ歩きながらも<br /><br />　これが現實とは思へず　まだ頭が普通ではないから　きっと間違ひだらけなのだと思ふ<br /><br />　と　お書きになる　どことなく亂れていらっしゃるお姿に　何を書かれたのかと　脇から覗き込んでみたくなる　やはり姫に對する思し召しは格別なものだと　お側の人々も改めて思ふ<br /><br />　みなも　それぞれ　故郷に　心細げな便りを書いたやうだ<br /><br />　片時も止まなかった雨模樣が　すっかりと澄み渡って　漁をする海人どもも意氣上った<br /><br />　須磨は實に寂しく　海人の岩屋も稀であったが　こちらの明石は　人の多い嫌ひはあったが　あはれなる風情が多く　色々と御氣持も慰まった</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF00F1&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4004140269" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>[PR]注目のキーワード「TOEIC」</title>
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<title>第十三卷 明石 十二(舟より御車にたてまつり移るほど）</title>
<description>   第十三卷 明石 十二(舟より御車にたてまつり移るほど） 舟より御車（おほむくるま）にたてまつり移るほど 日やうやうさし上がりて ほのかに見たてまつるより 老（おい）忘れ 齡延ぶる心地して 笑みさかえて まづ住吉の神を かつがつ拜みたてまつる 月日の光を手に得たてまつりたる心地して いとなみ仕（つか）うまつること ことわりなり 所のさまをば さらにも言はず 作りなしたる心ばへ 木立 立石（たていし） 前栽（せんざい）などのありさま えも言はぬ入江の水など 繪に描かば 心の...</description>
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<dc:date>2009-11-09T00:00:00+09:00</dc:date>
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<span style="font-size:large;"><span style="color:#323200;">　　　第十三卷　明石　十二(舟より御車にたてまつり移るほど）<br /><br />　舟より御車（おほむくるま）にたてまつり移るほど　日やうやうさし上がりて　ほのかに見たてまつるより<br /><br />　老（おい）忘れ　齡延ぶる心地して　笑みさかえて　まづ住吉の神を　かつがつ拜みたてまつる<br /><br />　月日の光を手に得たてまつりたる心地して　いとなみ仕（つか）うまつること　ことわりなり<br /><br />　所のさまをば　さらにも言はず　作りなしたる心ばへ　木立　立石（たていし）　前栽（せんざい）などのありさま　えも言はぬ入江の水など<br /><br />　繪に描かば　心のいたり少なからむ繪師は描（か）き及ぶまじと見ゆ<br /><br />　月ごろの御住まひよりは　こよなくあきらかに　なつかしき御しつらひなど　えならずして住まひけるさまなど　げに〓のやむごとなき所々に異ならず　艶（えん）にまばゆきさまは　まさりざまにぞ見ゆる<br /><br />　すこし御心（みこころ）靜まりては　京の御文（おほむふみ）ども聞こえたまふ<br /><br />　參れりし使（つかひ）は　今は　いみじき道に出で立ちて悲しき目を見る　と泣き沈みて　あの須磨に留まりたるを召して<br /><br />　身にあまれる物ども多くたまひて遣はす　むつましき御祈りの師ども　さるべき所々には　このほどの御ありさま　詳しく言ひつかはすべし<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　舟より御車にたてまつり移るほど　日やうやうさし上がりて　〔入道は君を〕ほのかに見たてまつるより＊　老忘れ　齡延ぶる心地して　笑みさかえて（榮えて）<br /><br />　まづ住吉の神を　かつがつ（取り敢へずも）　拜みたてまつる　月日の光＊を手に得たてまつりたる心地して　〔君に〕いとなみ（せっせと）仕うまつること　ことわりなり（無理も無い）<br /><br />〔明石の〕所のさまをば　さらにも言はず（言ふに及ばず）　作りなしたる心ばへ（趣向）　木立　立石（石組）　前栽（植ゑ込み）などのありさま　えも言はぬ入江の水など<br /><br />　繪に描かば　心のいたり少なからむ繪師は描き及ぶまじと見ゆ<br /><br />　月ごろの〔須磨の〕御住まひよりは　こよなくあきらかに（開放的で）　なつかしき（人心地のする）御しつらひなど　えならずして（言ひやうもなく）住まひけるさまなど　げに〓のやむごとなき所々に異ならず<br /><br />　艶にまばゆきさまは　〔むしろ〕まさりざま（勝ってゐるやう）にぞ見ゆる<br /><br />　すこし御心靜まりては　京の御文ども　聞こえ（書き）たまふ　〔あの二條院から〕參れりし使は　いみじき道〔中〕に出で立ちて　悲しき目を見る　と泣き沈みて　あの須磨に留まりたる＊を<br /><br />　〔こちらに〕召して　身にあまれる物ども多くたまひて　今は（この度は）〔〓に返し〕遣はす　むつましき御祈りの師ども〔や〕　さるべき所々には　このほど（最近）の御ありさま　詳しく言ひつかはすべし（詳しく知らせ遣はしたことだらう）<br /><br />＊「月日の光」<br /><br />　入道がこれに關する夢を見たことが、後の若菜巻上に書かれてゐる。現代小説なら極めて不親切で不適當な表現といふことになるだらうが、月日の光とは何だらう、といふやうな讀み方もまた、想像力を掻き立てる。<br /><br />＊「あの須磨に留まりたる」<br /><br />　君は、明石へ渡る船が小さかったので、親しいお供の者だけを連れて乗船してゐる。使者は取り殘されたのであらうが、明石に落ち着いた君は早速に召し寄せた。<br /><br />＊「舟より御車（おほむくるま）にたてまつり移るほど　日やうやうさし上がりて　ほのかに見たてまつるより」<br /><br />　これより前の記述では、須磨の浦まで迎へに行った二三人の中に入道がゐたやうに讀める。すると、須磨の浦を出たのが曉頃だったにせよ、狭い船内に一緒にゐながら（？）、明石の浦に着いて初めて君を「ほのかに見たてまつる」のは奇妙な感じもする。<br /><br />　入道は源氏の君が眩し過ぎ、恐れ畏んで直視出來なかったのが、明石の浦に着き、やうやく仄見ることが出來たのであらうか。入道の性格からすると、さういふことも有り得るだらう。<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　舟から御車に乘り移られる頃　日がだんだん差し上って　君のお姿が仄かに見えたから　入道は老いも忘れ　齡も延びるやうな心地がし　笑ひが止らず<br /><br />　まづは住吉の神に　取り敢へずも海路の無事を感謝し　拜み奉った<br /><br />　これで月日の光も手に入れたやうな氣になり　せっせと君をお世話申し上げてゐる　積年の大望に近づいたのだから　これも致し方あるまい<br /><br />　明石の土地柄は　申すにも及ばず　造作の趣向といひ　木立や立石（石組）　前栽の植ゑ込み　えも言はれぬ入江の水など<br /><br />　繪に描けば　未熟な繪師には到底描き切ることは出來まいと見える<br /><br />　今までの須磨の御住まひよりは　比較にもならず明るく開放的で　氣持のよい部屋の設へなど　何とも見事に住まってゐる樣子など　まこと〓の貴族たちの邸宅にも劣らない<br /><br />　むしろ目映いほどの艷やかさは勝ってゐるやうにさへ見える<br /><br />　すこし落ち着かれてから　京への文など　お書きになる<br /><br />　例の二條院から來た使者は　途んでもない道中に出て　ひどい目に遭ったものだと　泣きながらへたり込んでゐるのを　須磨に置いてきたのだが<br /><br />　今はそれを呼び寄せ　身に餘るほどの物をうんと與へ　また〓に遣った<br /><br />　親しい祈祷師や　然るべき所も　近況など　詳しく言ひ遣はした筈だ</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF00CD&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4098250020" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 十一(限りなくよろこびかしこまり申す ）</title>
<description>   第十三卷 明石 十一(限りなくよろこびかしこまり申す ） 限りなくよろこび かしこまり申す ともあれ かくもあれ 夜の明け果てぬ先に 御舟（みふね）にたてまつれ とて 例の親しき限り 四五人（しごにん）ばかりしてたてまつりぬ 例の風出で來て 飛ぶやうに明石に着きたまひぬ ただはひ渡るほどに片時の間といへど なほあやしきまで見ゆる風の心なり 濱のさま げにいと心ことなり 人しげう見ゆるのみなむ 御願ひに背きける 入道の領（らう）じ 占めたる所々 海のつらにも山隱れにも 時...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-08T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;"><span style="color:#000032;">　　　第十三卷　明石　十一(限りなくよろこびかしこまり申す ）<br /><br />　限りなくよろこび　かしこまり申す<br /><br />　ともあれ　かくもあれ　夜の明け果てぬ先に　御舟（みふね）にたてまつれ<br /><br />　とて　例の親しき限り　四五人（しごにん）ばかりしてたてまつりぬ<br /><br />　例の風出で來て　飛ぶやうに明石に着きたまひぬ　ただはひ渡るほどに片時の間といへど　なほあやしきまで見ゆる風の心なり<br /><br />　濱のさま　げにいと心ことなり　人しげう見ゆるのみなむ　御願ひに背きける<br /><br />　入道の領（らう）じ　占めたる所々　海のつらにも山隱れにも　時々につけて　興をさかすべき渚の苫屋<br /><br />　行なひをして　後（のち）の世のことを思ひ澄ましつべき山水（やまみづ）のつらに　いかめしき堂（だう）を建てて三昧（さんまい）を行なひ<br /><br />　この世のまうけに　秋の田の實（み）を刈り収め　殘りの齡積むべき稻の倉町（くらまち）どもなど<br /><br />　折々　所につけたる見どころありてし集めたり<br /><br />　高潮に怖（お）ぢて　このころ　娘などは岡邊（おかべ）の宿に移して住ませければ　この濱の館（たち）に心やすくおはします<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />〔入道は〕限りなくよろこび　かしこまり（御禮）申す<br /><br />〔供人〕ともあれ　かくもあれ　〔世間に目立たぬやう〕夜の明け果てぬ先に　　御舟にたてまつれ（乘られよ）<br /><br />　とて　例の親しき限り　四五人ばかりして　〔船に〕たてまつりぬ（乘られた）<br /><br />〔また〕例の風　出で來て　飛ぶやうに明石に着きたまひぬ　ただはひ渡るほど（距離）に　片時の間といへど　なほあやしきまで見ゆる風の心なり<br /><br />　濱のさま　げに　いと心こと（格別）なり　人〔の往來が〕しげう見ゆるのみなむ　御願ひに背きける<br /><br />　入道の領じ　占めたる所々　海のつら（面したところ）にも山隱れにも　時々（四季折々）につけて　興をさかす（盛りにする）べき渚の苫屋<br /><br />　行なひ（勤行）をして後世のことを思ひ澄ましつべき山水のつら（畔）に　いかめしき堂を建てて　〔念佛〕三昧を行なひ<br /><br />　この世のまうけ（生活）に　秋の田の實を刈り収め<br /><br />　殘りの齡積むべき稻の倉町どもなど<br /><br />　折々　所につけたる　見どころありてし　集めたり<br /><br />　高潮に怖ぢて　このころ　娘などは岡邊の宿に〔避難のため〕移して住ませければ　〔源氏の君は〕この濱の館に　心やすくおはします<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　入道　いたく歡び　御禮を申し上げた<br /><br />　供人は　ともかくもまぁ　餘り目立たぬやう　夜の明け切る前に　御舟にお乘り下され　といふ<br /><br />　いつもの親しい者四五人だけつれ　御船の乘られた<br /><br />　すると　また例の風が吹き始め　飛ぶやうに明石に着いてしまふた　ほんのひと泳ぎの距離　片時の間ではあったが　なほ不思議なことをする風であった<br /><br />　濱の景色　また實に格別だ　ただ人の行き來が多いのだけ　お望み通りには行かない<br /><br />　入道が所領する土地土地は　海づらにも山奧にもあり　四季折々の風情に合はせ<br /><br />　渚の苫屋があったり<br /><br />　或は　勤行に勵み　後世を思ひ澄ませさうな山水の畔に　いかめしい堂を建て　念佛三昧の行をしたり<br /><br />　身過ぎのためには　秋の田の實を刈り収め　殘りの齡を積むべき稻の倉を竝べ立てるなど<br /><br />　時節や土地柄もよく按排してある<br /><br />　高潮を避け　當座　娘などは岡邊の屋敷に避難させてゐたので　源氏の君は　この濱の館に　心やすくお着きになった</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=B002GH6ZI6" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>[PR]注目のキーワード「汗水たらした50万＝楽して手にした50万」</title>
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<dc:date>2009-11-08T00:00:00+09:00</dc:date>
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<title>第十三卷 明石 十(君思しまはすに夢うつつ）</title>
<description>   第十三卷 明石 十(君思しまはすに夢うつつ） 君 思しまはすに 夢 うつつ さまざま靜かならず さとしのやうなることどもを 來し方 行く末 思し合はせて 世の人の 聞き傳へむ後のそしりも やすからざるべきを憚りて まことの神の助けにもあらむを 背くものならば またこれよりまさりて 人笑はれなる目をや見む うつつざまの 人の心だに なほ苦し はかなきことをも つつみて 我より齡（よはひ）まさり もしは位高く 時世の寄せ 今一際（いまひときは）まさる人には なびき從ひて そ...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-07T00:00:00+09:00</dc:date>
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<span style="font-size:large;"><span style="color:#000032;">　　　第十三卷　明石　十(君思しまはすに夢うつつ）<br /><br />　君　思しまはすに　夢　うつつ　さまざま靜かならず　さとしのやうなることどもを　來し方　行く末　思し合はせて<br /><br />　世の人の　聞き傳へむ後のそしりも　やすからざるべきを憚りて　まことの神の助けにもあらむを　背くものならば　またこれよりまさりて　人笑はれなる目をや見む<br /><br />　うつつざまの　人の心だに　なほ苦し　はかなきことをも　つつみて　我より齡（よはひ）まさり　もしは位高く　時世の寄せ　今一際（いまひときは）まさる人には　なびき從ひて　その心むけを　たどるべきものなりけり<br /><br />　退きて咎なしとこそ　昔　さかしき人も言ひ置きけれ<br /><br />　げに　かく命を極め　世にまたなき目の限りを見盡くしつ　さらに後（のち）のあとの名をはぶくとても　たけきこともあらじ<br /><br />　夢の中にも　父帝（ちちみかど）の御教へ（おほむをしへ）ありつれば　また何ごとか疑はむ<br /><br />　と思して　御返り（おほむかへり）のたまふ<br /><br />　知らぬ世界に　めづらしき愁への限り見つれど　都の方よりとて　言問ひおこする人もなし<br /><br />　ただ行方なき空の月　日の光ばかりを　故郷（ふるさと）の友と眺めはべるに　うれしき釣舟をなむ<br /><br />　かの浦に　靜やかに隱ろふべき隈　はべりなむや<br /><br />　とのたまふ<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　君　〔色々と〕思しまはすに　〔故院の〕夢　〔突然の大嵐などの〕うつつ　さまざま靜かならず　さとしのやうなることどもを　來し方　行く末　思し合はせて<br /><br />　世の人の　〔怪しき入道如きの戯言を信じたと〕聞き傳へむ後のそしりも　やすからざるべきを憚りて　まことの神の助けにもあらむ（あるかも知れないの）を　背くものならば　またこれよりまさりて　人笑はれなる目をや見む<br /><br />　うつつざまの人の心だに（世間の人の心でも）　〔背けば〕なほ苦し（やはり辛いことになる）　はかなきことをも（怯懦な心は）つつみて（押し包んで）<br /><br />　我より齡まさり　もし〔く〕は位高く　時世の寄せ（世の信望）　今一際まさる人には　なびき從ひて　その心むけを　たどる（推し測る）べきものなりけり<br /><br />　〔私心を捨て　一歩〕退きて〔こそ〕咎なし　とこそ　昔　さかしき人も言ひ置きけれ<br /><br />　げに　かく命を極め（危ふくし）　世にまたなき目（經驗）の限りを見盡くしつ　さらに後のあとの名（これから先の悪名）をはぶく（無い様にする）とても　たけきこと（大したこと）もあらじ<br /><br />　夢の中にも　父帝の御教へありつれば　また何ごとか疑はむ（これ以上　何を疑ふべきだらう）<br /><br />　と思して　御返りのたまふ<br /><br />〔こちらの〕知らぬ世界に　めづらしき愁への限り見つれど　都の方よりとて　言問ひおこす（寄越す）る人もなし<br /><br />　ただ行方なき空の月　日の光ばかりを　故郷の友と眺めはべるに<br /><br />　うれしき釣舟　をなむ〔よく　お寄越し下さった〕　<br /><br />〔後撰、紀貫之「波にのみ　ぬれつるものを　吹く風の　たよりうれしき　海人のつり船」〕<br /><br />　かの（そちらの）浦に〔は〕　〔我が〕靜やかに隱ろふべき隈　はべりなむや<br /><br />　とのたまふ<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　君　思ん見るに　あの夢といひ　このうつつといひ　どうも穩やかではない　何かの警告があったやうに思へるし　何か起きさうに思はれてならない<br /><br />　ここで氣狂ひ入道のタハゴトを信じたと　噂でも立てば　それこそいい物笑ひの種だらうが　それを懼れ　まことの神の助けかも知れないのに　手を拱いてゐようものなら　さらにひどいことになり　物笑ひの大種になってしまふ<br /><br />　世間の人の心でも　背けばやはり辛いことになる　ここはやはり慎重に<br /><br />　自分より年のまさり　或はステータスが高くて　世の信望も今一層厚き人には　素直に從ひ　その御意向を　推し測るべきものである<br /><br />　私心を捨て　一歩退きてこそ　他人から責められる咎もないと　昔の賢人も言ってゐるだらう<br /><br />　かうして本當に命からがら　無類のあらゆる經驗をし盡くした　これから先　何が起こらうと　今以上に面目を失ふこともあるまい<br /><br />　夢の中に亡き父の教へもあったことだし　もはや何を迷ふことがあらうか<br /><br />　と思はれ　御返事をなさる<br /><br />　この見知らぬ土地で　馴れぬ心配事の限りを盡くしましたが　都の方からは誰一人見舞ひを寄越す者もゐない<br /><br />　ただどうなるか分らない不安な月日だけを故郷の友と思ひ　眺めてをりましたところ　かうして嬉しい釣舟を寄越して下さった　そちらの浦には　私が靜かに過ごせさうな隈は　あるのでせうか<br /><br />　とお尋ねになった</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF00CD&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=B002OXJ39U" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 九(去ぬる朔日の日の夢にさま異なるものの）</title>
<description>   第十三卷 明石 九(去ぬる朔日の日の夢にさま異なるものの） 去（い）ぬる朔日（ついたちのひ）の夢に さま異なるものの告げ知らすることはべりしかば 信じがたきことと思うたまへしかど 十三日（じふさむにち）に あらたなるしるし見せむ 舟装（よそ）ひまうけて かならず 雨風止まば この浦にを寄せよ と かねて示すことのはべりしかば 試みに舟の装ひをまうけて待ちはべりしに いかめしき雨 風 雷のおどろかしはべりつれば 人の朝廷（みかど）にも 夢を信じて國を助くるたぐひ多うはべり...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-06T00:00:00+09:00</dc:date>
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<span style="font-size:large;"><span style="color:#000065;">　　　第十三卷　明石　九(去ぬる朔日の日の夢にさま異なるものの）<br /><br />　去（い）ぬる朔日（ついたちのひ）の夢に　さま異なるものの告げ知らすることはべりしかば　信じがたきことと思うたまへしかど<br /><br />　十三日（じふさむにち）に　あらたなるしるし見せむ　舟装（よそ）ひまうけて　かならず　雨風止まば　この浦にを寄せよ<br /><br />　と　かねて示すことのはべりしかば　試みに舟の装ひをまうけて待ちはべりしに　いかめしき雨　風　雷のおどろかしはべりつれば<br /><br />　人の朝廷（みかど）にも　夢を信じて國を助くるたぐひ多うはべりけるを　用ゐさせたまはぬまでも　このいましめの日を過ぐさず　このよしを告げ申しはべらむとて　舟出だしはべりつるに<br /><br />　あやしき風細う吹きて　この浦に着きはべること　まことに神のしるべ違（たが）はずなむ　ここにも　もししろしめすことやはべりつらむ<br /><br />　とてなむ　いと憚り多くはべれど　このよし　申したまへ<br /><br />　と言ふ　良清　忍びやかに傳へ申す<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />〔入道〕<br /><br />　去ぬる一日の夢に　さま異なる（異樣な姿の）ものの告げ知らすることはべりしかば　信じがたきことと思うたまへしかど<br /><br />　十三日に　あらたなる（鮮〔あらた〕かなる）しるし（靈驗）見せむ　舟装ひまうけて　かならず　雨風止まば　この浦にを〔漕ぎ〕寄せよ<br /><br />　と　かねて（豫め）示すことのはべりしかば　試みに舟の装ひをまうけて待ちはべりしに　いかめしき雨　風　雷のおどろかしはべりつれば<br /><br />　人（外國）の朝廷にも　夢を信じて國を助くるたぐひ多うはべりけるを　〔たとひ〕用ゐさせ（言を取り上げ）たまはぬまでも　このいましめ（お告げ）の日（須磨の浦に船を寄せよと告げられた十三日）を過ぐさず　このよしを告げ申しはべらむとて　舟出だしはべりつるに<br /><br />　あやしき風　〔導くやうに部分的に〕細う吹きて　この浦に着きはべること　まことに神のしるべ（導き）　違はずなむ（間違ひがなかった）<br /><br />　ここにも　もし　しろしめす（ご存知の）ことや　はべりつらむ（あったのでせうか）<br /><br />　とてなむ　いと憚り多くはべれど　このよし　〔君に〕申したまへ<br /><br />　と言ふ　良清　忍びやかに（こっそりと）傳へ申す<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　入道云ふ<br /><br />　去る一日の夢に　異樣なる姿の者のお告げがございました　信じがたいこととは存じましたが<br /><br />　十三日に　鮮（あらた）かな靈驗を見せよう　舟を支度して　雨風が止んだら　きっと　この浦に漕ぎ寄せよ<br /><br />　との　豫言がございましたので　試みに舟の支度を致しまして　待ってをりましたところ　激しい雨　風　雷が襲って參ったのでございます　それで<br /><br />　他國の朝廷にも　夢のお告げを信じて　國を助ける類の話が多うございますので　假に御注進が無用のものとならうと　この浦に船を寄せよと告げられた十三日を過ごさぬやう　この旨をご報告申し上げようと　舟を出しましたところ<br /><br />　あやしき風　船を導きますやうに吹きまして　この浦に着きましてございます　まことに神のしるべは　間違ひもございませなんだ<br /><br />　或は　こちらの方にも　もしや　お氣附きのことが　ございましたか<br /><br />　といふことで　まことに恐縮ながら　この由を君に申し上げて下され<br /><br />　と言ふ　良清は　ことがことだから　小聲で君に申し上げた</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF009D&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=B000UGGS0K" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 八(渚に小さやかなる舟寄せて人二三人ばかり）</title>
<description>   第十三卷 明石 八(渚に小さやかなる舟寄せて人二三人ばかり） 渚に小（ちひ）さやかなる舟寄せて 人 二三人（にさむにん）ばかり この旅の御宿り（おほむやどり）をさして參る 何人（なにびと）ならむと問へば 明石の浦より 前（さき）の守（かみ）新發意（しぼち）の 御舟 装ひて參れるなり 源少納言（げんせうなごん） さぶらひたまはば 對面（たいめ）して ことの心とり申さむ と言ふ 良清 おどろきて 入道は かの國の得意にて 年ごろあひ語らひはべりつれど 私（わたくし）に いさ...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-05T00:00:00+09:00</dc:date>
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<span style="font-size:large;"><span style="color:#0000CB;">　　　第十三卷　明石　八(渚に小さやかなる舟寄せて人二三人ばかり）<br /><br />　渚に小（ちひ）さやかなる舟寄せて　人　二三人（にさむにん）ばかり　この旅の御宿り（おほむやどり）をさして參る　何人（なにびと）ならむと問へば<br /><br />　明石の浦より　前（さき）の守（かみ）新發意（しぼち）の　御舟　装ひて參れるなり　源少納言（げんせうなごん）　さぶらひたまはば　對面（たいめ）して　ことの心とり申さむ<br /><br />　と言ふ　良清　おどろきて<br /><br />　入道は　かの國の得意にて　年ごろあひ語らひはべりつれど　私（わたくし）に　いささか　あひ恨むることはべりて　ことなる消息をだに通はさで　久しうなりはべりぬるを　波の紛れに　いかなることかあらむ<br /><br />　と　おぼめく　君の　御夢（おほんゆめ）なども思し合はすることもありて　はや逢へ　とのたまへば　舟に行きて逢ひたり<br /><br />　さばかり激しかりつる波風に　いつの間にか舟出しつらむ　と　心得がたく思へり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　渚に小さやかなる舟寄せて　人の二三人ばかり　この〔君の〕旅の御宿りをさして參る　何人（誰）ならむと問へば<br /><br />　明石の浦より　前の守（元國司）　新發意（新たに發意して入道した者）の　御舟　装ひて（仕立てて）　參れるなり<br /><br />　源少納言（源良清）　さぶらひたまはば　對面して　ことの心とり申さむ（御高配を戴かう）　〔須磨の巻で、良清は入道の娘に懸想し、完全無視されてゐる。ただ、父親の入道からは話があると申し込まれた〕<br /><br />　と言ふ　良清　おどろきて<br /><br />　入道は　かの國の得意（お得意樣）にて　年ごろ（年來）あひ語らひはべりつれど　私に（プライベートの關係で）　いささか　〔互ひに〕あひ恨むることはべりて<br /><br />　ことなる消息をだに通はさで（とくに文さへ交はすこともなく）　久しうなりはべりぬるを　波の紛れに〔やって來るとは〕　いかなることかあらむ（何の料簡でせう）<br /><br />　と　おぼめく（空っとぼける）　君の（君は）　御夢なども思し合はすることもありて　はや逢へ　とのたまへば　<br /><br />　〔良清は〕舟に行きて逢ひたり<br /><br />　さばかり（あれほど）激しかりつる波風に　〔入道は〕いつの間にか舟出しつらむ　〔こいつは化け物か〕<br /><br />　と　心得がたく思へり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />「君の　御夢（おほんゆめ）なども思し合はすることもありて」<br /><br />　君の夢に故院が現れ、「など　かくあやしき所にものするぞ　とて　御手（みて）を取りて引き立てたまふ　住吉の神の導きたまふままに　はや舟出して　この浦を去りね」と云はれた（明石　六）。<br /><br />　海から現れた怪しげな入道一行が、その住吉の神の導きによるものではないかと思はれるのである。<br /><br />　この邊り、普通の都會生活を送ってゐる感覺からすると、やや馬鹿らしいやうな氣もするが、<br /><br />１）實際に仕事を失ひ、<br />２）先行きの確かな希望もなく、<br />３）馴れた土地を離れ、<br />４）人も住んでゐないやうな隔絶した土地に住まひ、<br />５）知りたい情報が遮斷され、<br />６）非常に單調な環境下にゐ<br /><br />　ると、普通の生活感覺が後退し、普通の人にも、いはゆる幻聽や幻視、神祕體驗といったものが珍しくなくなって來る。宇宙飛行士にUFOの目撃者が多いのは３）４）の理由に據るのだらうし、しかし露西亜の飛行士に少ないのは、宇宙船の修理に忙しかったからだらう。<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　渚に禿びた舟を漕ぎ寄せ　二三人ばかりが　君の旅の御宿りの方へやって來る　誰だらうと訊くと<br /><br />　明石の浦より　元國司にして　新發意の者　御舟を仕立てて　參上仕った<br />　源少納言殿　侍ひ給はば　對面して　御高配を給りたし<br /><br />　と言ふ　まさか向かうから來るとは思はなかった　良清　慌てて<br /><br />　あの入道め　確かに　この國で懇意にしてをり　何年の付き合ひもございましたが　ちょっとプライベートの方面で　恨みを遺すやうなことがございまして<br /><br />　それきりプッツンと消息も斷ち　隨分と久し振りになってをります　それが今更　波間の海坊主よろしく流れ着くとは　いったい何を考へてをるのでございませうか<br /><br />　など　空っとぼける<br /><br />　しかし君も　故院の夢のお告げのこともあり　さっさと逢って見よ　と仰る<br /><br />　かうなりゃ仕方ないと　船まで行って見るが　それにしても　あの浪風　よくも舟なんか出せたものだ　或は本物の海坊主なのかなと　實に不思議だった</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4478760357?ie=UTF8&tag=yusunoki23-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4478760357">しごとが面白くなる源氏物語―永遠の女性心理を読んで現代のニーズを探る (しごとが面白くなる)</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=yusunoki23-22&l=as2&o=9&a=4478760357" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 七(飽かず悲しくて御供に參りなむ）</title>
<description>   第十三卷 明石 七(飽かず悲しくて御供に參りなむ） 飽かず悲しくて 御供に參りなむ と泣き入りたまひて 見上げたまへれば 人もなく 月の顏のみきらきらとして 夢の心地もせず 御けはひ止まれる心地して 空の雲あはれにたなびけり 年ごろ 夢のうちにも見たてまつらで 戀しうおぼつかなき御さまを ほのかなれど さだかに見たてまつりつるのみ 面影におぼえたまひて 我がかく悲しびを極め 命盡きなむとしつるを 助けに翔（かけ）りたまへる と あはれに思すに よくぞかかる騷ぎもありける...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-04T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;"><span style="color:#333333;">　　　第十三卷　明石　七(飽かず悲しくて御供に參りなむ）<br /><br />　飽かず悲しくて　御供に參りなむ　と泣き入りたまひて　見上げたまへれば<br /><br />　人もなく　月の顏のみきらきらとして　夢の心地もせず　御けはひ止まれる心地して　空の雲あはれにたなびけり<br /><br />　年ごろ　夢のうちにも見たてまつらで　戀しうおぼつかなき御さまを　ほのかなれど　さだかに見たてまつりつるのみ　面影におぼえたまひて<br /><br />　我がかく悲しびを極め　命盡きなむとしつるを　助けに翔（かけ）りたまへる　と　あはれに思すに<br /><br />　よくぞかかる騷ぎもありける　と　名殘　頼もしう　うれしうおぼえたまふこと　限りなし<br /><br />　胸つとふたがりて　なかなかなる御心（みこころ）惑ひに　うつつの悲しきこともうち忘れ　夢にも御應へ（おほむいらへ）を今すこし聞こえずなりぬること<br /><br />　といぶせさに　またや見えたまふ　と　ことさらに寢入りたまへど　さらに御目も合はで　曉方（あかつきがた）になりにけり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />〔君は　故院が　そのまま行かれてしまふのが〕飽かず悲しくて　御供に參りなむ　と泣き入りたまひて　見上げたまへれば<br /><br />　人もなく　月の顏のみ　きらきらとして　夢の心地もせず　〔院の〕御けはひ　止まれる心地して　空の雲あはれに　たなびけり<br /><br />　年ごろ（年來）　夢のうちにも〔お姿を〕見たてまつらで　戀しう　おぼつかなき（氣掛かりであった）御さまを　ほのかなれど　さだかに見たてまつりつるのみ　面影におぼえたまひて（イメージとして殘り）<br /><br />　我がかく悲しびを極め　命盡きなむとしつるを　助けに翔り〔つけ〕たまへる　と　あはれに思すに　よくぞかかる騷ぎもありける　と<br /><br />〔今の體驗の〕名殘　頼もしう　うれしうおぼえたまふこと　限りなし<br /><br />　胸　つと　ふたがりて（胸が一杯で）　〔懐かしさに〕なかなかなる御心惑ひに（却って取り亂し）　うつつの悲しきこともうち忘れ　夢にも（あれ）　御應へを今すこし聞こえずなりぬること<br /><br />　といぶせさに（心殘りで）　またや見えたまふ　と　ことさらに寢入りたまへど　さらに御目も合はで　曉方になりにけり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　もう行かれてしまふのかと　寂しくて　「御供に參りませう」と泣きついて　見上げると<br /><br />　誰もゐない　ただ月の顏のみ　きらきらとしてゐる　しかし　ただの夢とも思へず　まだ　院の御氣配が　漂ふやうに　空の雲があはれにたなびいてゐた<br /><br />　このところ夢の中にもお姿を見ず　戀しく　寂しく思ってゐた御姿を　はっきりと見たことだけは　確かなことだった<br /><br />　自分がこのやうに悲嘆のどん底に落ち　命脈も盡きようとするのを　助けに駈けつけて下さった　と　有難く思へば　あれほどの騷ぎも良かったとさへ思へる<br /><br />　それほど　頼もしく　この上もなく嬉しかったのに　胸が詰まり　取り亂してしまったために　現實の悲嘆も忘れて　たとひ夢にもあれ　もう少しご返事も出來なかったものかと<br /><br />　それが心殘りで　またお逢ひ出來るだらうと　強ひて寢ようとはするが　まるで眠れずに　明け方になってしまった</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000JA8J4K?ie=UTF8&tag=yusunoki23-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B000JA8J4K">源氏物語の旅 (1967年) (歴史選書〈5〉)</a><img src="http://www.assoc-amazon.jp/e/ir?t=yusunoki23-22&l=as2&o=9&a=B000JA8J4K" width="1" height="1" border="0" alt="" style="border:none !important; margin:0px !important;" /></div><br /><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 六(この風今しばし止まざらましかば）</title>
<description>   第十三卷 明石 六(この風今しばし止まざらましかば） この風 今しばし止まざらましかば 潮（しほ）上（のぼ）りて 殘る所なからまし 神の助けおろかならざりけり と言ふを聞きたまふも いと心細しといへばおろかなり 海にます 神の助けに かからずは 潮のやほあひに さすらへなまし ひねもすに いりもみつる雷（かみ）の騷ぎに さこそいへ いたう困（こう〔kon〕）じたまひにければ 心にもあらず うちまどろみたまふ かたじけなき御座所（おましどころ）なれば ただ寄りゐたまへるに...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-03T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;"><span style="color:#000065;">　　　第十三卷　明石　六(この風今しばし止まざらましかば）<br /><br />　この風　今しばし止まざらましかば　潮（しほ）上（のぼ）りて　殘る所なからまし　神の助けおろかならざりけり<br /><br />　と言ふを聞きたまふも　いと心細しといへばおろかなり<br /><br />　海にます　神の助けに　かからずは　潮のやほあひに　さすらへなまし<br /><br />　ひねもすに　いりもみつる雷（かみ）の騷ぎに　さこそいへ　いたう困（こう〔kon〕）じたまひにければ　心にもあらず　うちまどろみたまふ<br /><br />　かたじけなき御座所（おましどころ）なれば　ただ寄りゐたまへるに　故院　ただおはしまししさまながら　立ちたまひて<br /><br />　など　かくあやしき所にものするぞ<br /><br />　とて　御手（みて）を取りて引き立てたまふ　住吉の神の導きたまふままに　はや舟出して　この浦を去りね<br /><br />　とのたまはす　いとうれしくて<br /><br />　かしこき御影（みかげ）に別れたてまつりにしこなた　さまざま悲しきことのみ多くはべれば　今はこの渚に身をや捨てはべりなまし<br /><br />　と聞こえたまへば<br /><br />　いとあるまじきこと　これは　ただいささかなる物の報いなり　我は位に在りし時　あやまつことなかりしかど　おのづから犯しありければ　その罪を終ふるほど　暇（ひま）なくて　この世を顧みざりつれど<br /><br />　いみじき愁へに沈むを見るに　堪へがたくて　海に入り　渚に上（のぼ）り　いたく困じにたれど　かかるついでに　内裏に奏すべきことのあるによりなむ　急ぎ上りぬる<br /><br />　とて　立ち去りたまひぬ<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />〔海人〕<br /><br />　この風　今しばし止まざらましかば（止まなかったら）　潮上りて（高潮が來て）　〔人の〕殘る所　なからまし（なかっただらう）　神の助け　おろか（竝大抵）ならざりけり<br /><br />　と言ふを聞きたまふも　いと心細しといへばおろかなり（心細いどころではない）<br /><br />〔君〕<br /><br />　海にます　神の助けに　かからずは　潮のやほあひ（八百會）に　さすらへなまし<br /><br />〔海にいます神の助けに據らなければ　多くの潮の寄せ集まった海に漂ってゐたことだらう　何といふ幸運であらうか〕<br /><br />　ひねもすに（終日）　いりもみ（熬り揉み＝激しく襲ひ）つる雷の騷ぎに　さこそいへ（さうは言っても）　いたう困じたまひにければ　心にもあらず　うちまどろみ（微睡み）たまふ<br /><br />　かたじけなき（慘めな）御座所なれば　ただ〔物に〕寄り〔かかり〕ゐたまへるに　故院（故桐壺院）　ただおはしまししさまながら（生前の御姿のままに）　立ちたまひて<br /><br />　など（why）　かくあやしき所にものする（ゐる）ぞ　<br /><br />　とて　御手を取りて　引き立てたまふ<br /><br />　住吉の神の導きたまふままに　はや舟出して　この浦を去りね（出なさい）<br /><br />　とのたまはす　いとうれしくて<br /><br />〔君〕<br /><br />　かしこき〔故院の〕御影に別れたてまつりにしこなた（以降）　さまざま悲しきことのみ多くはべれば　今はこの渚に身をや捨てはべりなまし（捨ててしまひたい）<br /><br />　と聞こえたまへば<br /><br />〔故院〕<br /><br />　いとあるまじきこと　これは　ただいささか（聊か）なる物（事）の報いなり<br /><br />　我は位に在りし時　あやまつことなかりしかど　おのづから（無意識で）犯しありければ　〔あの世で〕その罪を〔償ひ〕終ふるほど（間は）　暇なくて　この世を顧みざりつれど<br /><br />〔君が〕いみじき愁へに沈むを見るに　堪へがたくて　海に入り　渚に上り　いたく困じ（困憊し）にたれど　かかるついで（機會に）に　内裏に奏すべきことのあるによりなむ　急ぎ〔京に〕上りぬる（上らう）<br /><br />　とて　立ち去りたまひぬ<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　海人が　「風がもう少し止まなかったら　潮が上って　一人殘らずさらはれただらう　神樣のお助けが竝大抵ぢゃなかった」と言ふのを聞いても　もう膽を冷やすどころの騷ぎではない　海の神樣のお助けがなければ　潮の八百會に流されてゐただらう　と思はれた<br /><br />　一日中大暴れした雷騷動で　さしも氣張った君もさすがに疲れ果て　うっかりと微睡んでしまはれる<br /><br />　ひどく粗末な御座所だから　物に寄りかかっていらっしゃると　故院が　御生前そのままの御姿で立ち現れ給ひ<br /><br />「なぜ　こんな妙な場所にゐるのだ」<br /><br />　と　手を取り　引き立てて下さる<br /><br />「住吉の神樣の教への通りに　はやく舟を出して　この浦を離れよ」<br /><br />　と仰る　君は嬉しくなり<br /><br />「畏き故院の御姿にお別れしてからこなた　さまざま悲しきことのみ多くございましたので　もうこの渚に身を捨ててしまひたい」<br /><br />　と申し上げると<br /><br />「あるまじきことだ　今はただ聊かの過ちの報いに過ぎない　私が帝位に在ったときは　別段の過ちはなかったが　知らず知らずに犯したことがあり　あの世でその罪を償ひ終るまでは　暇もなく　この世を顧みずに來たが<br /><br />　君が大變な惱みに沈んでゐるのを見て　堪へがたくなり　海に入り　渚に上り　ひどく困憊したことではあるが　この機會に内裏に申し上げることがあるから　急ぎ京に上らうと思ふ」<br /><br />　と仰り　立ち去られた</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4622012189" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 五(やうやう風なほり雨の脚しめり）</title>
<description>   第十三卷 明石 五(やうやう風なほり雨の脚しめり） やうやう風なほり 雨の脚しめり 星の光も見ゆるに この御座所（おましどころ）のいとめづらかなるも いとかたじけなくて 寢殿（しんでん）に返し移したてまつらむとするに 燒け殘りたる方も疎（うと）ましげに そこらの人の踏みとどろかし惑へるに 御簾なども みな吹き散らしてけり 夜を明してこそは とたどりあへるに 君は御念誦（おほむねんず）したまひて 思しめぐらすに いと心あわたたし 月さし出でて 潮（しほ）の近く滿ち來ける跡...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-02T00:00:00+09:00</dc:date>
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<span style="font-size:large;"><span style="color:#333333;">　　　第十三卷　明石　五(やうやう風なほり雨の脚しめり）<br /><br />　やうやう風なほり　雨の脚しめり　星の光も見ゆるに　この御座所（おましどころ）のいとめづらかなるも　いとかたじけなくて　寢殿（しんでん）に返し移したてまつらむとするに<br /><br />　燒け殘りたる方も疎（うと）ましげに　そこらの人の踏みとどろかし惑へるに　御簾なども　みな吹き散らしてけり　夜を明してこそは<br /><br />　とたどりあへるに　君は御念誦（おほむねんず）したまひて　思しめぐらすに　いと心あわたたし<br /><br />　月さし出でて　潮（しほ）の近く滿ち來ける跡もあらはに　名殘なほ寄せ返る波荒きを　柴の戸押し開けて　眺めおはします<br /><br />　近き世界に　ものの心を知り　来し方行く先のことうちおぼえ　とやかくやと　はかばかしう悟る人もなし<br /><br />　あやしき海人どもなどの　貴（たか）き人おはする所とて　集り參りて　聞きも知りたまはぬことどもを　さへづりあへるも　いとめづらかなれど　え追ひも拂はず<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　やうやう風なほり　雨の脚しめり（衰へ）　星の光も見ゆるに　この御座所のいとめづらか（珍妙）なるも　いとかたじけなくて 〔君を〕寢殿に返し移したてまつらむとするに<br /><br />〔供人〕<br /><br />　燒け殘りたる方も疎ましげ（厭な感じ）に　そこら（大勢）の人の踏みとどろかし惑へる〔間〕に　御簾なども　みな〔暴風が〕吹き散らしてけり<br /><br />　夜を明してこそは〔樣子を見よう〕<br /><br />　と　たどりあへる（思案にあぐねる）に　君は御念誦し（念佛を唱へ）たまひて　〔あれこれ〕思しめぐらすに　いと心あわたたし<br /><br />　月さし出でて　潮の　近く滿ち來ける跡もあらはに〔見え〕　〔嵐の〕名殘　なほ寄せ返る波荒きを　柴の戸押し開けて　眺めおはします<br /><br />　近き世界（近い所）に　ものの心を知り　来し方行く先のことうちおぼえ　とやかくやと　はかばかしう悟る人もなし<br /><br />　あやしき海人どもなどの　貴き人おはする所とて　集まり參りて　〔君が今までに〕聞きも知りたまはぬことどもを　さへづりあへるも　いとめづらかなれど　え追ひも拂はず<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　次第に風も凪ぎ　雨脚も衰へ　星の光も見えて來ると　この御座所が實にをかしな場所だと氣附く餘裕が出來た　まことに申譯も無いと　寢殿にお戻ししようとするが<br /><br />　燒け跡といふのも氣味が惡いね<br /><br />　大勢　どたばたする間に　御簾など　みな吹っ飛んじまったやうだね<br /><br />　もう一晩樣子を見てみようか<br /><br />　など　思案投げ首<br /><br />　その間にも　君は念佛を唱へつつ　あれこれと思ひが廻り　實に心落ち着かない<br /><br />　月が出　邊りが見えて來ると　潮が目近にまで滿ちてゐる　まだ嵐っぽい荒波が打ち寄せるのを　君は　柴の戸を押し開き　眺めておはした<br /><br />　やはり　手の届きさうな近くには　物がよく分り　色々なことを識ってゐて　あれこれ　適確に判斷出來る専門家がゐない<br /><br />　その代はり　譯の分らぬ海人どもが　どえらい人がゐるさうだと　集まって來る　今までに聞いたこともないやうなことを　ペチャクチャと喋ってゐるのも　實に奇妙なものだが　惡氣のある譯でも無し　強ひて追っ拂ひも出來ない</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=D100FF&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4796666885" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 四(帝王の深き宮に養はれたまひて）</title>
<description>   第十三卷 明石 四(帝王の深き宮に養はれたまひて） 帝王（ていわう）の深き宮に養はれたまひて いろいろの樂しみにおごりたまひしかど 深き御慈しみ（おほむうつくしみ） 大八洲（おほやしま）にあまねく 沈める輩をこそ 多く浮かべたまひしか 今 何の報いにか ここら 〓樣なる波風には溺(おぼ)ほれたまはむ 天地（あめつち） ことわりたまへ 罪なくて罪に當たり 官位（つかさくらゐ）を取られ 家を離れ 境を去りて 明け暮れ安き空なく 嘆きたまふに かく悲しき目をさへ見 命盡きなむ...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-11-01T00:00:00+09:00</dc:date>
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<span style="color:#320032;"><span style="font-size:large;">　　　第十三卷　明石　四(帝王の深き宮に養はれたまひて）<br /><br />　帝王（ていわう）の深き宮に養はれたまひて　いろいろの樂しみにおごりたまひしかど　深き御慈しみ（おほむうつくしみ）　大八洲（おほやしま）にあまねく<br /><br />　沈める輩をこそ　多く浮かべたまひしか　今　何の報いにか　ここら　〓樣なる波風には溺(おぼ)ほれたまはむ<br /><br />　天地（あめつち）　ことわりたまへ　罪なくて罪に當たり　官位（つかさくらゐ）を取られ　家を離れ　境を去りて　明け暮れ安き空なく　嘆きたまふに　かく悲しき目をさへ見　命盡きなむとするは　前（さき）の世の報いか　この世の犯（をか）しか<br /><br />　神　佛　明らかにましまさば　この愁へ　やすめたまへ<br /><br />　と　御社（みやしろ）の方（かた）に向きて　さまざまの願を立てたまふ　また　海の中の龍王　よろづの神たちに願を立てさせたまふに<br /><br />　いよいよ鳴りとどろきて　おはしますに續きたる廊（らう）に落ちかかりぬ　炎（ほのほ）燃え上がりて　廊は燒けぬ<br /><br />　心魂（こころたましひ）なくて　ある限り惑ふ　後（うしろ）の方なる大炊殿（おほひどの）とおぼしき屋に移したてまつりて<br /><br />　上下となく立ち込みて　いとらうがはしく泣きとよむ聲　雷（いかづち）にも劣らず　空は墨をすりたるやうにて　日も暮れにけり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ <br /><br />〔供人〕<br /><br />〔君は〕帝王の深き宮に養はれたまひて　いろいろの樂しみにおごり（贅を盡くし）たまひしかど　〔君の〕深き御慈しみ　大八洲にあまねく<br /><br />〔不幸に〕沈める輩をこそ　多く浮かべ（救ひ）たまひしか　今　何の報いにか　ここら（こんなにひどい）〓樣（無體＝無茶）なる波風には溺ほれたまはむ<br /><br />　天地　ことわり（是非を辨別し）たまへ　罪なくて罪に當たり　官位を取られ　家を離れ　境を去りて　明け暮れ安き空なく　嘆きたまふに<br /><br />　かく悲しき目をさへ見　命盡きなむとするは　前の世の報いか　この世の犯しか　神　佛　明らかにましまさば　この愁へ　やすめ（靜め）たまへ<br /><br />　と　御社の方に向きて　さまざまの願を立てたまふ　また　海の中の龍王　よろづの神たちに願を立てさせたまふに<br /><br />　いよいよ鳴りとどろきて　おはします〔御座所に〕に續きたる廊に落ちかかりぬ　炎燃え上がりて　廊は燒けぬ　<br /><br />　心魂なくて　ある限り惑ふ　後の方なる大炊殿とおぼしき屋に〔君を〕移したてまつりて<br /><br />　上下となく立ち込みて　いとらう（亂）がはしく　泣きとよむ聲　雷にも劣らず　空は墨をすりたるやうにて　日も暮れにけり<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　供の者は、<br /><br />「君は　帝王の深窗にお育ちに成り　いろいろの樂しみにも贅を盡くされましたが　その深い御慈悲は日本中に廣がりまして<br /><br />　不幸に身を沈めた者どもをこそ　たくさんお助けになった　それが今　どういふ報いにより　かういふ非道い波風に弄ばれなけれならないのか<br /><br />　天地も事の理非をよく正し給へ　罪なくて罪に當たり　官位を取られ　家を離れ　ふるさとを去り　明け暮れ不安なまま　お嘆きになられる<br /><br />　かく悲しい目に遭ひ　命も盡きようとするのは　どういふ譯によるのか　何の罪によるのか　神佛も明らかに坐しまさば　この愁へを　どうかお靜め下さい<br /><br />　と　御社の方に向き　さまざまの願を立て　また　君も　海の中の龍王　よろづの神たちに願を立てさせたまふに<br /><br />　雷はますます鳴り轟き　御座所に續く廊に落ちかかった　炎が燃え上がり　廊は燒けてしまふ　<br /><br />　みな仰天し　爲す術も無い　寢殿の後方にある大炊殿めいた建物に君をお移し申し上げ<br /><br />　上下みなごった返し　大騷動になって　泣き叫ぶ聲　雷にも負けてゐない　　空は墨をすったやうに暗く　そのまま日が暮れた</span></span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=FF00B5&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4805309210" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 三(かくしつつ世は盡きぬべきにやと思さるるに）</title>
<description>   第十三卷 明石 三(かくしつつ世は盡きぬべきにやと思さるるに） かくしつつ 世は盡きぬべきにや と思さるるに そのまたの日の曉（あかつき）より 風いみじう吹き 潮高う滿ちて 波の音荒きこと 巖（いはほ）も山も殘るまじきけしきなり 雷（かみ）の鳴りひらめくさま さらに言はむ方なくて 落ちかかりぬ とおぼゆるに ある限りさかしき人なし 我はいかなる罪を犯して かく悲しき目を見るらむ 父母にもあひ見ず かなしき妻子（めこ）の顏をも見で 死ぬべきこと と嘆く 君は御心を靜めて ...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-10-31T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;">　　　第十三卷　明石　三(かくしつつ世は盡きぬべきにやと思さるるに）<br /><br />　かくしつつ　世は盡きぬべきにや　と思さるるに　そのまたの日の曉（あかつき）より　風いみじう吹き　潮高う滿ちて　波の音荒きこと　巖（いはほ）も山も殘るまじきけしきなり<br /><br />　雷（かみ）の鳴りひらめくさま　さらに言はむ方なくて　落ちかかりぬ　とおぼゆるに　ある限りさかしき人なし<br /><br />　我はいかなる罪を犯して　かく悲しき目を見るらむ　父母にもあひ見ず　かなしき妻子（めこ）の顏をも見で　死ぬべきこと<br /><br />　と嘆く　君は御心を靜めて　何ばかりのあやまちにてか　この渚に命をば極（きは）めむ　と　強う思しなせど<br /><br />　いともの騷がしければ　色々の幣帛（みてぐら）ささげさせたまひて<br /><br />　住吉の神　近き境（さかひ）を鎭め守りたまふ　まことに迹を垂れたまふ神ならば　助けたまへ<br /><br />　と　多くの大願（だいぐゎん）を立てたまふ<br /><br />　おのおの　みづからの命をば　さるものにて　かかる御身（おほむみ）の　またなき例に沈みたまひぬべきことの　いみじう悲しきに<br /><br />　心を起こして　すこしものおぼゆる限りは　身に代へて　この御身一つを救ひたてまつらむ　と　とよみて　諸聲に　佛　神を　念じたてまつる<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　かくしつつ　世は盡き（終り）ぬべきにや　と思さるるに　そのまたの日（翌日）の曉より　風いみじう吹き　潮高う滿ちて　波の音荒きこと　巖も山も殘るまじき（押し流される）けしきなり<br /><br />　雷の鳴りひらめくさま　さらに言はむ方なくて　落ちかかりぬ　とおぼゆるに　ある限りさかしき人（覺めた人）なし<br /><br />〔供人〕<br /><br />　我はいかなる罪を犯して　かく悲しき目を見るらむ　父母にもあひ見ず　かなしき（愛しい）妻子の顏をも見で　死ぬべきこと<br /><br />　と嘆く　君は御心を靜めて<br /><br />　何ばかりのあやまちにてか（どれほどの過ちを犯さうが）　この渚に命をば極めむ（窮まって堪るか）　と　強う思しなせど<br /><br />　いともの騷がしければ　色々の〔神の怒りを鎭める〕幣帛ささげさせたまひて<br /><br />　住吉の神　近き境（領域）を鎭め守りたまふ　まことに〔本地に〕迹（存在の兆候）を垂れたまふ神ならば　助けたまへ<br /><br />　と　多くの大願を立てたまふ　おのおの　みづからの命をば　さるものにて　（さるものながら）　かかる〔君の〕御身の　またなき例に（異樣な事態で）沈み（死に）たまひぬべきことの　いみじう悲しきに<br /><br />　心を起こして　すこしものおぼゆる（正氣でゐる）限りは　身に代へて　この御身一つを救ひたてまつらむ　と　とよみて諸聲に（大聲を一齋に出し）諸聲に　佛　神を　念じたてまつる<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　こんな風にして　この世は終ってしまふのだらうか　と思ってゐると　その翌日の明け方より　ものすごい風が吹き　高潮が滿ちて來　波の音の荒いこと　　巖も山も押し流されさうな勢ひ<br /><br />　雷鳴りと稻光は　さらに凄まじく　あぁ落ちて來た　と思った途端　みんな氣がをかしくなった<br /><br />　供人など、「俺が何を惡さして　こんな目に遭はされるんだらう　親にも逢へないまま　かはいいカカァや子の顏も見ずに死ぬとは」などと嘆いてゐる　<br /><br />　君は御心を靜め、たとひ何の過ちを犯さうが　こんな渚で死んで堪るかと　強氣に思ふが<br /><br />　ともかくも大騷動であるから　　色々な幣帛を捧げさせ、「住吉の神よ、この附近を鎭め守りたまふ、まことにその通りの神樣ならば、どうか助けたまへ」<br /><br />　と　作法通りに大願も立てられる<br /><br />　皆　自分の命もさるものながら　かういふ大事の君の御身が　非常の事態で危なくなられたことが實に悲しく<br /><br />　氣を奮ひ起こし　多少でも正氣でゐる限りは　その身に代へ　君御一人をお救ひしようと　一齋に大聲を出し　佛神に祈りを捧げた</span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=C9333A&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=448074004X" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石 二(御文にあさましくを止みなきころのけしきに）</title>
<description>   第十三卷 明石 二(御文にあさましくを止みなきころのけしきに） 御文（おほむふみに）に あさましく を止みなきころのけしきに いとど空（そら）さへ閉づる心地して 眺めやる方なくなむ 浦風や いかに吹くらむ 思ひやる 袖うち濡らし 波間なきころ あはれに悲しきことども 書き集めたまへり いとど汀（みぎは）まさりぬべく かきくらす心地したまふ 京（きゃう）にも この雨風 あやしき物のさとしなりとて 仁王會（にんわうゑ）など 行はるべしとなむ聞こえはべりし 内裏（うち）に參り...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-10-30T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<span style="font-size:large;">　　　第十三卷　明石　二(御文にあさましくを止みなきころのけしきに）<br /><br />　御文（おほむふみに）に<br /><br />　あさましく　を止みなきころのけしきに　いとど空（そら）さへ閉づる心地して　眺めやる方なくなむ<br /><br />　浦風や　いかに吹くらむ　思ひやる　袖うち濡らし　波間なきころ<br /><br />　あはれに悲しきことども　書き集めたまへり　いとど汀（みぎは）まさりぬべく　かきくらす心地したまふ<br /><br />　京（きゃう）にも　この雨風　あやしき物のさとしなりとて　仁王會（にんわうゑ）など　行はるべしとなむ聞こえはべりし　内裏（うち）に參りたまふ上達部なども　すべて道閉ぢて　政（まつりごと）も絶えてなむはべる<br /><br />　など　はかばかしうもあらず　かたくなしう語りなせど　京の方のことと思せば　いぶかしうて　御前（おまへ）に召し出でて　問はせたまふ<br /><br />　ただ　例の雨の　を止みなく降りて　風は時々吹き出でて　日ごろになりはべるを　例ならぬことに驚きはべるなり<br /><br />　いとかく　地の底徹（とほ）るばかりの氷（ひ）降り　雷（いかづち）の靜まらぬことは　はべらざりき<br /><br />　など　いみじきさまに驚き懼（お）ぢてをる顔の　いとからきにも　心細さまさりける <br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />〔紫の上の〕御文に<br /><br />　あさましく　を止み（小止み）なきころのけしきに　いとど空さへ閉づる心地して　眺めやる方なくなむ<br /><br />　浦風や　いかに吹くらむ　思ひやる　袖うち濡らし　波間なきころ<br /><br />〔そでを濡らす浪の休む暇も無い〕<br /><br />　あはれに悲しきことども書き集めたまへり<br /><br />〔君も〕いとど　汀まさりぬべく〔土佐日記、「行く人も　とまるも袖の　涙川　みぎはのみこそ　濡れまさりけれ」〕　かきくらす心地したまふ<br /><br />〔使者〕<br /><br />　京にも　この雨風　あやしき物のさとし（お告げ）なりとて　仁王會（鎭護國家のための宮中行事の一種）など　行はるべし（筈である）となむ聞こえはべりし　内裏に參りたまふ上達部なども　〔冠水で〕すべて道閉ぢて　政（行政）も絶えてなむはべる<br /><br />　など　はかばかしうもあらず（たどたどしく）　かたくなしう（ぶつくさと）語りなせど<br /><br />　京の方のことと思せば　いぶかしうて（詳細が知りたくて）　御前に召し出でて（出して）　問はせたまふ<br /><br />〔使者〕<br /><br />　ただ　例の雨の（恆例となった雨が）を止みなく降りて　風は時々吹き出でて　日ごろに（幾日にも）なりはべるを　例ならぬことに驚きはべるなり<br /><br />　いとかく　地の底徹る（地面の穴が開く）ばかりの氷（雹、霰）降り　雷の靜まらぬことは　はべらざりき<br /><br />　など　（使者が）いみじきさまに驚き　懼ぢてをる顔の　いとからきにも（辛さうなのを見ても）　心細さ　まさりける<br /><br />＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊<br /><br />　紫の上からの御文には<br /><br />　いやになるほど雨も降り續いて　まるで空に蓋が出來たやうで　眺めやる方角もありません　　<br /><br />　浦風や　いかに吹くらむ　思ひやる　袖うち濡らし　波間なきころ　<br /><br />　など　悲しさうなことが色々と　君もどっと涙が溢れ　何も見えなくなった<br /><br />　使者によると　〓では　この雨風は妙な物のお告げであるからと　仁王會なども行はれることになってゐるらしい　參内する上達部らも　道路が水浸しで通れず　行政も完全に麻痺してゐるとか<br /><br />　など　ぼそぼそ云ふやうだが　あまり要領を得ない　〓のこととなれば　君も詳細が知りたく　御前に召し出し　直かに御聞きになった<br /><br />「ただもう雨がざーざー　えろ降りやしてな　止むことも知らんやうで　風も時々吹いてめぇりやすし　いくんちも經つもんでごぜぇやすから　はぁ　こいは尋常のこんではないと　びっくらこいたやうな鹽梅ぇにて　はぁ　ごぜぇやす<br /><br />　こいな風に　地べたに穴の開くほど氷が降るは　雷が止まんちうのは　ただごとではなからうと　はぁ　みな言ふてをりやす」<br /><br />　など　使者も異樣な天候に驚き　顏が引きつってゐる　見てゐる方が　心配になって來た</span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0020FF&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=406272166X" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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<title>第十三卷 明石（あかし） 一(なほ雨風やまず雷鳴り靜まらで）</title>
<description>   第十三卷 明石（あかし） 一(なほ雨風やまず雷鳴り靜まらで） なほ雨風（あめかぜ）やまず 雷（かみ）鳴り靜まらで 日ごろになりぬ いとど ものわびしきこと 數知らず 來し方行く先 悲しき御ありさまに 心強うしも え思しなさず いかにせまし かかりとて 〓に歸らむことも まだ世に許されもなくては 人笑はれなることこそまさらめ なほ これより深き山を求めてや あと絶えなまし と思すにも 波風に騷がれてなど 人の言ひ傳へむこと 後の世まで いと輕々しき名や 流し果てむ と思し...</description>
<dc:subject>日記</dc:subject>
<dc:creator>ゆふづつ</dc:creator>
<dc:date>2009-10-29T00:00:00+09:00</dc:date>
<content:encoded><![CDATA[
<img src="http://tamanowogusi.up.seesaa.net/image/akasi.jpg" width="300" height="239" border="0" align="" alt="akasi.jpg" onclick="location.href = 'http://tamanowogusi.seesaa.net/upload/detail/image/akasi.jpg.html'; return false;" style="cursor:pointer;" /><br /><br /><span style="font-size:large;">　　　第十三卷　明石（あかし）　一(なほ雨風やまず雷鳴り靜まらで）<br /><br />　なほ雨風（あめかぜ）やまず　雷（かみ）鳴り靜まらで　日ごろになりぬ<br /><br />　いとど　ものわびしきこと　數知らず　來し方行く先　悲しき御ありさまに　心強うしも　え思しなさず<br /><br />　いかにせまし　かかりとて　〓に歸らむことも　まだ世に許されもなくては　人笑はれなることこそまさらめ　なほ　これより深き山を求めてや　あと絶えなまし<br /><br />　と思すにも<br /><br />　波風に騷がれてなど　人の言ひ傳へむこと　後の世まで　いと輕々しき名や　流し果てむ<br /><br />　と思し亂る<br /><br />　夢にも　ただ同じさまなる物のみ來つつ　まつはしきこゆ　と見たまふ<br /><br />　雲間なくて明け暮るる日數に添へて　京（きゃう）の方（かた）も　いとどおぼつかなく　かくながら　身を　はふらかしつるにや　と　心細う思せど<br /><br />　頭（かしら）さし出づべくもあらぬ空の亂れに　出で立ち參る人もなし　二條院よりぞ　あながちにあやしき姿にて　そほち參れる<br /><br />　道かひにてだに　人か何ぞとだに御覽じわくべくもあらず　まづ追ひ拂ひつべき賤（しづ）の男（を）の　むつましう　あはれに思さるるも　我ながらかたじけなく　屈（くっ）しにける心のほど思ひ知らる<br /><br />＊＊＊（略解）＊＊＊<br /><br />　なほ雨風やまず　雷鳴り靜まらで　日ごろ（數日）になりぬ<br /><br />　いとど　ものわびしき（困惑するやうな）こと　數知らず　來し方〔を思ふも〕行く先〔を思ふも〕悲しき御ありさまに　心強うしも　え思しなさず<br /><br />　いかにせまし（どうしようか）　かかりとて（かうなったからといって）　〓に歸らむことも　まだ世に許されもなくては　人笑はれなることこそまさらめ<br /><br />　なほ　これより深き山を求めてや　あと絶えなまし（行方を斷たうか）　と思すにも　波風に騷がれて〔たうとう吹き流された〕など　人の言ひ傳へむこと　後の世まで　いと輕々しき名や流し果てむ　と思し亂る<br /><br />　夢にも　ただ同じさま（姿）なる物のみ來つつ　〔君に〕まつはしきこゆ（るやうだ）と〔君は〕見たまふ<br /><br />　雲〔の晴れる〕間なくて明け暮るる日數に添へて　京の方も　〔君は〕いとどおぼつかなく（心配になり）<br /><br />　かくながら（このまま）　〔我が〕身を　はふらかし〔放置し〕つるにや　と　心細う思せど　<br /><br />　頭さし出づ（頭を外に出す）べくもあらぬ空〔模樣〕の亂れに　〔見舞ひに〕出で立ち參る人もなし<br /><br />〔ただ〕二條院よりぞ　あながちに（無理をして）あやしき姿にて　〔濡れ〕そほち〔ながら〕〔使者が〕參れる<br /><br />　道かひ（道ですれ違った場合）にてだに　〔それが〕人か何ぞとだに御覽じわく（識別す）べくもあらず　まづ追い拂ひつべき賤の男の　むつましう（親しみを覺え）　〔よく來てくれたと〕あはれに思さるるも　我ながら　かたじけなく（みじめで）　屈しにける心（意氣阻喪）のほど思ひ知らる<br /><br />＊＊（近代小説風）＊＊<br /><br />　雨風がやまず　雷も靜まらず　幾日も經った<br /><br />　もうウンザリするやうなことばかり　どう考へても辛くなる一方で　氣持を立て直すのも無理<br /><br />　ところが　いかんせん　いまさら〓に歸らうと　どの顏下げて人前に出られるものか　もう笑ひ者にされるのは御免だ<br /><br />　いっそ　山奧深いところでも見つけ　行方でも晦ますしかないが　世間の奴ら　波風に吹き立てられ　あはれ吹き流されただのと　言ふに違ひないだらうから　頭隱した尻がドジなのも締まらない話<br /><br />　あの夢も　また同じ樣な氣味の惡いのが出て來るだけ　どうもしつっこくつきまとって來る<br /><br />　かう何日も雲り空ばかり續くと　〓の事も心配になる　こんな地の底で　朽ち果てるのを待つより先に　だんだん氣の方が萎えて來る　<br /><br />　なにしろこの天氣　亀よろしく首でも窄めてゐるしかない　わざわざ見舞ひに來るやうな物好きもない<br /><br />　さすがに二條院だけからは　無理にでも　怪しげなのが　ぐしょ濡れになってやって來た<br /><br />　道ですれ違っても化け物にしか見えない　氣持惡いから追っ拂ってやりたくなる風體　そんな小汚いのが　いやに懷かしく見えるから情けない　我ながら慘め　自分が凹んでゐるのが分る</span><br /><br /><div style="text-align:center;"><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=FFFFFF&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=F500FF&t=yusunoki23-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4404036086" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe></div><a name="more"></a>

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